同じ事実でも、問いの角度を変えるだけで見える景色がまったく変わります。この「角度を変える」技術がリフレーミングです。
この記事でわかること
- リフレーミングとは何か
- なぜ同じ問いに固執してしまうのか
- 角度を変えると何が見えるようになるか
「なぜ離職率が高いのか」
この問いに、チームは何ヶ月も取り組んでいる。給与を見直した。福利厚生を改善した。1on1を増やした。でも離職率は下がらない。
こういうとき、問いの深さを変えても状況が変わらないことがあります。「なぜ?」を何段掘っても、同じ方向の答えしか出てこない。
そういうときに必要なのは、深さではなく角度です。
リフレーミングとは何か
リフレーミングとは、同じ事実を別の角度から見直すことです。
「なぜ離職率が高いのか」という問いは、「離職が問題だ」という前提に立っています。離職を減らすことが目的で、その原因を探している。
ここで角度を変えてみます。
「離職しなかった人は、なぜ残っているのか」。
同じ「離職率」という事実を見ていますが、問いの方向がまったく違います。「辞める理由」ではなく「残る理由」に焦点を当てている。
この角度で見ると、まったく違う情報が出てきます。残っている人に共通する要素は何か。上司との関係か、仕事の裁量か、成長の実感か。「辞める原因を潰す」のではなく「残る条件を強化する」という打ち手が見えてくる。
リフレーミングとは、問いの枠組み(フレーム)を変えること。 同じ事実でも、どの角度から問いを立てるかで、見える景色と出てくる打ち手が変わります。

なぜ同じ角度に固執してしまうのか
「角度を変えればいい」と言うのは簡単です。でも実際には、同じ角度から問い続けてしまうことがほとんどです。
理由は2つあります。
ひとつは、最初に立てた問いが「正しい」と思い込むから。 「離職率が高い → なぜ辞めるのか」。この流れは自然に見えます。あまりにも自然なので、他の角度があることに気づきにくい。
もうひとつは、途中で角度を変えることに抵抗があるから。 すでに「辞める理由」の調査に時間をかけている。ここで角度を変えると、これまでの努力が無駄になるように感じる。でも、方向が間違っているなら、そのまま掘り続けても答えは出ません。
「もっと深く掘れば答えが出るはず」と思っているときこそ、角度を変えるタイミングかもしれない。 同じ方向に掘り続けて成果が出ていないなら、問い自体の角度を疑う。
角度を変えると、何が見えるようになるか
リフレーミングの効果を、もう少し具体的に見てみます。
例①:売上が伸びない
元の問い:「なぜ売上が伸びないのか」。この角度では、伸びない原因を探します。営業力が弱い、プロダクトに魅力がない、価格が高い。
角度を変える:「売上が伸びている競合は、自社と何が違うのか」。同じ「売上」というテーマですが、自社の内側ではなく外側に目を向けている。比較の対象ができることで、「自社に足りないもの」が具体的に見えてきます。
例②:新規事業のアイデアが出ない
元の問い:「どんな新規事業をやるべきか」。この角度では、ゼロからアイデアを生み出そうとします。ブレストをしても「前にも聞いたことがある」案ばかり出てくる。
角度を変える:「既存顧客がお金を払ってでも解決したい課題で、自社がまだ手をつけていないものは何か」。アイデアを生み出す問いではなく、既に存在する課題から逆算する問い。出発点が変わるので、出てくるものも変わります。
例③:会議が非効率
元の問い:「なぜ会議が非効率なのか」。この角度では、会議の問題点を探します。アジェンダがない、参加者が多すぎる、時間が長い。
角度を変える:「この会議がなかったら、何が困るか」。そもそも必要かどうかを問い直している。「なくても困らない」と分かれば、改善ではなく廃止が正解です。
どの例も、事実は同じです。変わったのは問いの角度だけ。角度が変わると、見える景色が変わり、出てくる打ち手が変わる。
リフレーミングは「否定」ではなく「追加」
ここで大事なことがあります。リフレーミングは、元の問いを否定することではありません。
「なぜ離職率が高いのか」が間違いで、「なぜ残っているのか」が正しい、という話ではない。両方とも有効な問いです。
リフレーミングは、1つの角度しか見ていなかった状態に、別の角度を追加すること。 元の問いを捨てるのではなく、別の問いも持つ。複数の角度から見ることで、1つの角度では見えなかったものが見えるようになります。
Vol.4-5で「見渡す→切り分ける→絞る」を整理しました。リフレーミングは、この「見渡す」の精度を上げる技術でもあります。1つの角度だけで見渡すのと、複数の角度で見渡すのでは、見える範囲がまったく違います。
まとめ
この記事のポイントを3つにまとめます。
- リフレーミングとは、同じ事実を別の角度から問い直すこと。問いの枠組みを変えると、見える景色と打ち手が変わる
- 同じ方向に掘り続けて成果が出ないときは、深さではなく角度を変えるタイミング。最初の問いに固執しない
- リフレーミングは元の問いの否定ではなく、別の角度の追加。複数の角度から見ることで、1つの角度では見えなかったものが見える
次回は後編として、リフレーミングを業務で使う3つの具体パターンを整理します。「原因ではなく条件を問う」「内側ではなく外側を見る」「解決ではなく前提を疑う」。角度の変え方にはパターンがあります。


