上司の問いが、チームの思考の天井になる

上司の問いが、チームの思考の天井になる

部下の問う力を育てる話をしてきました。でも、チームの思考の質を決めているのは、実は上司が投げる問いです。上司の問いが低い天井を作ると、部下がどんなに優秀でも、その下でしか考えられません。

この記事でわかること

  • 上司の問いがチームの思考の「天井」になる仕組み
  • 無意識に天井を作ってしまう3つのパターン
  • 天井を上げるために上司ができること

Vol.25-26で、部下に問いを渡す方法と、フィードバックの仕方を整理しました。あれは「部下を育てる側」の話です。

今回は視点を変えます。上司が投げる問いそのものが、チームの思考にどんな影響を与えているか。

上司の問いが「天井」になる

「今月の売上目標にどう届かせるか」。上司がこの問いを投げた。チーム全員がこの問いの中で考え始める。値引きキャンペーン、既存顧客への追加提案、月末の駆け込み営業。施策はいくつも出てくる。

会議は回っている。チームはちゃんと考えている。上司も手応えを感じている。

でも、全員が「今月の売上」の天井の下で考えている。 「そもそも今月の未達は一時的なものか、3ヶ月続いている構造的な問題か」。この問いは誰も立てていない。上司が天井を決めたから、チームはその下で動いている。天井より上の問いには誰も手が届かない。

厄介なのは、上司自身がこの天井に気づきにくいことです。会議は回っている。施策は出てくる。部下は考えているように見える。でも実際は、上司の問いの範囲内で考えているだけかもしれない。Vol.20で「全員が同じ前提を共有していると疑われない」と整理しました。上司の問いも同じ構造です。

この天井の構造は、実はもっと上まで続いています。突き詰めれば、組織の思考の天井を作っているのは経営者の問いです。

特に上場企業ほど、四半期決算のプレッシャーで「今期の売上をどう作るか」に問いが固定されやすい。経営者がその問いを投げると、部長は「今月の数字をどう積むか」に変換し、課長は「今週の案件をどう動かすか」に変換する。問いが一段降りるごとに小さくなり、現場にたどり着く頃には目の前の作業レベルまで縮んでいる。

一番気をつけなければならないのは経営者です。 でも、この記事の読者は中間管理職が多いはずです。だからこそ知っておいてほしい。自分の上にも天井がある。その天井は経営者の問いから来ている。それを理解した上で、自分のチームに対しては意識的に天井を上げる。 上から降りてきた問いをそのまま下に流すのではなく、自分のところで一度「見渡して」から部下に渡す。

上司ができる最も価値のある仕事は、経営者の短期的な問いを受け止めつつ、チームには中長期の問いも考える余地を残すことかもしれません。

無意識に天井を作る3つのパターン

誰でもやりがちなパターンが3つあります。

① 問いを絞りすぎる

「今月の売上をどう埋めるか」。上司としては焦点を絞っているつもり。でもこの問いの下では、短期の施策しか出てこない。構造的な問題を議論する余地がない。

Vol.4で「見渡してから絞る」と整理しました。上司が最初から絞った問いを投げると、チームは見渡すステップを飛ばす。上司の側からすると「論点を明確にした」つもりです。でもそれは「見渡した上で絞った」のか、「見渡さずに最初から絞った」のかで、まったく意味が違います。

② 問いの中に答えを入れてしまう

「A案で進めるとして、スケジュールをどう組むか」。上司としては判断を示して効率を上げているつもり。でもチームから見ると、A案が前提になっていて、B案やC案の可能性が消えている。

上司の判断が正しければ問題ない。でも、判断が正しいかどうかをチームが検証する機会を奪っている。Vol.20で整理した「前提を疑う」余地がない問いです。上司が良かれと思って判断を先に示すほど、チームの思考の天井が低くなる。

③ 毎回同じ問いを投げる

毎週の会議で「今週の進捗は? 問題は? 来週の予定は?」。報告としては機能する。でも、この問いから新しい思考は生まれない。

進捗確認は必要です。でもそれだけだと、チームは「報告する」モードに入る。「考える」モードにならない。同じ問いの繰り返しは、チームの思考を現状維持に固定する。 新しい切り口、構造的な課題、長期的な視点。こういうものは定例の問いからは出てこない。

天井を上げるために

① 問いを投げる前に、自分の問いをチェックする

会議で問いを投げる前に、3秒だけ考える。「この問いは絞りすぎていないか」「答えが含まれていないか」「先週と同じ問いになっていないか」。

Vol.22の「問いの素振り」をやっていれば、このチェックは自然にできます。自分の問いのパターンを知っていれば、「また同じ天井を作っている」と気づける。

AIに壁打ちするのも有効です。

来週のチーム会議で以下の問いを投げようと思っています。
「今月の売上目標にどう届かせるか」

この問いの問題点を指摘してください。
・この問いで見えなくなるものは何か
・もっと広い視野で考えるべき問いはないか
・この問いに暗黙の前提が含まれていないか

会議の前に5分、AIに壁打ちするだけで、自分が作ろうとしている天井に気づけます。

② チームに「天井を壊す許可」を出す

「今日の議論の前提を疑ってもいい。『そもそもこの問いで合ってますか』と聞いてくれて構わない」。これを上司が明示的に言う。

Vol.20で「前提を疑うのは空気を壊す行為だ」と整理しました。上司が「壊していい」と許可を出さない限り、部下は上司の問いを疑えません。許可は一度言えばいいのではなく、毎回言う。 一度許可しても、上司が不機嫌な顔をしたら、次から部下は疑わなくなります。

③ 時々「問いの設計」自体をチームに任せる

「来週の会議、何を論点にすべきだと思う?」と問いの設計をチームに投げる。上司が毎回問いを決める必要はない。

上司一人の視野には限界があります。チームで問いを設計すれば、上司が見えていない角度からの問いが出てくる。Vol.25-26で「問いの設計を委譲する」と整理しました。個人への委譲だけでなく、チーム全体への委譲もできます。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • 上司の問いはチームの思考の天井になる。問いを絞りすぎる、答えを入れてしまう、同じ問いを繰り返す。この3つが無意識に天井を作る。突き詰めれば、組織の天井を作っているのは経営者の問い
  • 天井が見えにくいのは、チームが天井の下で考えていても会議は回っているように見えるから。上から降りてきた問いをそのまま流すのではなく、自分のところで一度見渡してから部下に渡す
  • 天井を上げるには、問いを投げる前に自分をチェックする、チームに天井を壊す許可を出す、問いの設計自体をチームに任せる

次回は「上司に良い問いをしてもらうための技術」。今回は上司側の話でした。次回は逆に、部下の立場から上司の問いの質を上げる方法を整理します。