AIを壁打ち相手にして、問いを磨く

AIを壁打ち相手にして、問いを磨く

Vol.18-19では「AIに仕事を任せるための問い」を整理しました。今回は逆向きです。自分の問いを鍼えるために、AIを壁打ち相手として使う。

この記事でわかること

  • AIを「壁打ち相手」にするとはどういうことか
  • 問いを磨く4つの壁打ちパターン
  • AIとの壁打ちが機能する条件と、機能しない場合

Vol.18-19では、AIに仕事を任せるときの問いの設計を整理しました。あれは「AIに良い出力をさせるため」の問いです。

今回は逆向きです。「自分の問いを磨くため」にAIを使う。 AIに答えを出してもらうのではなく、AIに問いの弱点を指摘してもらう。

Vol.22の素振り③で触れた内容を、もっと深く掘り下げます。

「壁打ち相手」とは何か

人に壁打ちを頼むとき、期待しているのは「答え」ではなく「反応」です。「こう考えているんだけど、どう思う?」と聞いて、「その角度は良いけど、ここが抜けてない?」と返してもらう。

仕事では、良い壁打ち相手を見つけるのが難しい。上司は忙しい。同僚はそれぞれの業務がある。「ちょっとこれ、どう思う?」と気軽に聞ける相手がいない。

AIなら、いつでも何度でも壁打ちに付き合ってくれます。遠慮もない。忙しくもない。ただし、AIとの壁打ちは「投げ方」次第です。漠然と「どう思う?」と聞いても、漠然とした反応しか返ってこない。投げ方にパターンがあります。

パターン①:問いの弱点を指摘してもらう

自分が立てた問いをAIに渡して、改善点を指摘してもらう。Vol.22の素振り③で紹介した方法です。

私は以下の問いを立てました。
「新規事業のターゲットを法人と個人のどちらにするか」

この問いの弱点を指摘してください。
主語・時間軸・前提・深さ・範囲の観点から、
何が足りないか具体的に教えてください。
修正案も示してください。

AIは「判断の基準(売上規模か専門性か)が入っていない」「時間軸(いつまでに決めるか)がない」「『どちらか一方』以外の選択肢(両方同時、段階的)を検討していない」など、具体的な指摘を返してくれます。

ポイントは、「主語・時間軸・前提・深さ・範囲」と観点を明示すること。「この問いどう思う?」と漠然と聞くより、第2部の操作技法の観点を軸にして聞く方が、AIの指摘が具体的になります。

パターン②:別の角度の問いを出してもらう

自分が立てた問いとは別の角度からの問いを、AIに出してもらう。Vol.7-8のリフレーミングをAIにやってもらうイメージです。

私は「新規事業のターゲットを法人と個人のどちらにするか」
という問いを立てました。

この問いとはまったく別の角度から、
同じテーマについて考えるべき問いを3つ出してください。
それぞれ、なぜその角度が必要なのかも説明してください。

AIは「そもそも新規事業は本当に必要か」(前提を疑う)、「競合がまだ少ない市場はどこか」(市場視点)、「既存顧客が最も求めているものは何か」(顧客視点)など、自分が思いつかなかった角度を提示してくれます。

これは「答え」をもらっているのではなく、「問いの選択肢」をもらっている。自分の問いが唯一の問いではないと気づくこと自体に価値があります。

パターン③:前提を洗い出してもらう

Vol.20で「前提を疑う問い」を整理しました。前提を疑うのが難しいのは、そもそも前提が言語化されていないからでした。AIに前提を言語化させるのは、壁打ちの中でも特に効果が大きいパターンです。

私たちは「新規事業のターゲットを法人と個人のどちらにするか」
を議論しています。

この問いが成り立つために、
暗黙に前提としていることを5つ挙げてください。
それぞれ、その前提が間違っていた場合に
何が起きるかも教えてください。

AIは「新規事業をやること自体は決定済み」「法人か個人かは二者択一」「既存事業とのリソース競合は発生しない」など、自分たちが無意識に置いていた前提を炊き出してくれます。

前提が言語化されれば、疑うことができる。 「本当に二者択一か? 段階的に両方やる選択肢は?」。こういう問いが生まれます。

パターン④:反論させて問いを強化する

自分の問いに対して、AIに反論させる。仮説思考のミニシリーズVol.6で整理した「迎合を防ぐ指示」を、問いの磨き上げにも使います。

私は以下の問いで来週の会議を進めようとしています。
「新規事業のターゲットを法人と個人のどちらにするか」

この問いに対して、遠慮なく反論してください。
- この問いで会議を進めた場合に、うまくいかない可能性
- この問いでは見えない、もっと重要な論点
- この問いよりも先に答えるべき問い
を挙げてください。

「遠慮なく反論してください」が大事です。これがないと、AIは「良い問いだと思います」と迎合しがちです。また、「うまくいかない可能性」「見えない論点」「先に答えるべき問い」と観点を具体的に指定すると、AIの反論が的確になります。

反論を受けたら、「その反論を踏まえて、問いを修正してください」と続ける。AIが反論し、AIが修正案を出し、それを自分で判断する。この往復で問いが磨かれていきます。

AIとの壁打ちが機能する条件

4つのパターンに共通する、うまくいくための条件があります。

自分の問いを先に持っていること。 「何か良い問いを考えて」ではなく、自分の問いがあって、それを磨くためにAIを使う。問いの生成をAIに丸投げするのではなく、自分の問いを磨くためのAI活用です。

観点を指定すること。 「どう思う?」ではなく、「主語・時間軸・前提・深さ・範囲の観点で」「別の角度で」「前提を」「反論を」と、何を求めているかを明示する。

AIの指摘をそのまま受け入れないこと。 AIが出した指摘や代替案は、あくまで素材です。「この指摘は的確だ」「これは自社の状況には当てはまらない」と自分で判断する。判断するのは人間です。

AIとの壁打ちが機能しない場合

逆に、うまくいかないケースもあります。

自分の問いがないとき。 「何か良い問いを考えて」と丸投げすると、AIは一般的な問いを返します。それは自分の仕事に合った問いではない。壁打ちは「自分の問いを磨く」ためのもので、「問いを作ってもらう」ためのものではない。

AIの指摘を全部受け入れてしまうとき。 AIが「この問いには時間軸が必要です」と言ったら、本当に時間軸が必要かを自分で判断する。会議の30分で決める必要があるなら、問いを広げるより絞る方が正しいかもしれない。AIの指摘を取捨選択する力が、壁打ちを機能させる鍵です。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • AIを「壁打ち相手」にするとは、AIに答えを出してもらうのではなく、自分の問いの弱点を指摘してもらうこと。Vol.18-19の「AIに仕事を任せる問い」とは逆向き
  • 4つの壁打ちパターン。弱点を指摘させる、別の角度の問いを出させる、前提を洗い出させる、反論させて強化する。どれも観点を明示するのがコツ
  • AIの指摘をそのまま受け入れず、自分で判断することが壁打ちを機能させる鍵。問いの生成をAIに丸投げするのではなく、自分の問いを磨くためにAIを使う

次回からは「部下」と「上司」の話に入ります。部下の「問う力」を育てるには、答えではなく問いを渡す。でも、渡し方を間違えると「丸投げ」になる。問いの渡し方を整理します。