毎日5分でできる「問いの素振り」

毎日5分でできる「問いの素振り」

問いの力を伸ばすのに、特別な訓練は必要ありません。毎日5分、日常の出来事に対して問いを立てる「素振り」を続けるだけで、問いの筋力がつきます。

この記事でわかること

  • 「問いの素振り」とは何か
  • 3つの素振りメニュー
  • 続けるためのコツ

前回、問いの力が伸びにくい理由を4つ整理しました。フィードバックがない、使うきっかけがない、周囲が答えを求める、一人で練習しにくい。

この4つの壁を、いきなり全部壊す必要はありません。まず「一人で、毎日、短時間でできる練習」から始める。 それが「問いの素振り」です。

「問いの素振り」とは

野球の素振りは、試合で打つための練習です。実際にボールが飛んでくるわけではない。でも、フォームを体に染み込ませる。素振りを続けた人は、実際の打席でも自然に動ける。

問いの素振りも同じです。日常の仕事の中で「あ、ここで問いを立てられたな」と気づく練習。実際に会議で使う必要はない。気づくだけでいい。気づく回数が増えると、実際の場面でも自然に問いが出てくるようになります。

ポイントは「5分」に収めること。長い時間をかけると続かない。朝の5分、昨休みの5分、退勤前の5分。どこかの5分で1回やるだけ。

素振り①:ニュースに問いを立てる

朝、ニュースを見たとき。事実だけを読むのではなく、問いを1つ立てる。

「大手メーカーが新規事業に参入」。

ここで素振り。「なぜこのタイミングか?」(時間軸・Vol.11)。「既存事業とのシナジーはどこか?」(主語を変える・Vol.9)。「この参入で一番困るのは誰か?」(角度を変える・Vol.7-8)。

どれでもいい。1つ立てるだけ。正解はない。「事実を見たときに問いが浮かぶ」という回路を作ることが目的です。

素振り②:昨日の会議を振り返る

昨日の会議を1つ思い出す。5分で振り返る。

「あの会議で、どんな問いが設定されていたか?」。明示的に問いが設定されていたなら、「あの問いは良い問いだったか?もっと良い問いはなかったか?」。

問いが設定されていなかったなら、「もし自分が問いを設定するなら、何にするか?」。

Vol.14で整理した「テーマと論点の違い」を思い出してください。「売上について議論した」はテーマ。「売上ギャップの主因は新規か既存か」が論点。昨日の会議で設定されていたのはテーマだったか、論点だったか。

これが前回の「フィードバックがない」問題への対処です。 自分でフィードバックを作る。会議の後に「あの問いはどうだったか」を振り返る。他の人からのフィードバックがなくても、自分で振り返れば改善できます。

素振り③:AIに問いを投げて壁打ちする

Vol.21で「一人で練習しにくい」という壁を挙げました。でも、AIがいれば一人でも対話的な練習ができます。

やり方はシンプルです。今の仕事で考えていることをAIに投げて、問いの改善点を指摘してもらう。

たとえば、こんなプロンプトを投げます:

私は以下の問いを立てました。
「来四半期の売上をどう伸ばすか」
この問いの改善点を指摘してください。
具体的に何が足りないか、どう修正すればより良い問いになるか教えてください。

AIは「主語が不明確」「時間軸が広すぎる」「何を基準に判断するかが入っていない」と指摘してくれます。第2部の操作技法で学んだことを、AIが代わりにフィードバックしてくれる。

さらに深めたいなら、こう聞いてみます:

この問いに対して、あなたなら何を聞き返しますか?
私が見落としている視点があれば指摘してください。

AIが返してくる「聞き返し」は、自分が見落としている視点を気づかせてくれることがあります。

問いの前提を疑わせたいなら、こう投げます:

私たちは以下の前提で施策を進めています。
「訪問件数を増やせば売上が上がる」
この前提に対して、遠慮なく反論してください。
この前提が間違っている可能性がある理由と、
代わりに検討すべき別の前提を挙げてください。

Vol.20で整理した「前提を疑う問い」の練習が、AI相手に一人でできます。

AIは「問いの壁打ち相手」として優秀です。 遠慮しない。忙しくない。何度でも付き合ってくれる。

続けるためのコツ

素振りが続かない一番の原因は「完璧にやろうとすること」です。

3つのメニューを毎日全部やる必要はありません。今日は①だけ。明日は②だけ。それで十分。 5分すら取れない日はスキップしていい。週に3回やれれば上出来です。

もうひとつのコツは、「いつやるか」を決めておくこと。「朝のコーヒーを飲みながらニュースに問いを立てる」「退勤前の5分で昨日の会議を振り返る」。タイミングを固定すると、習慣になりやすい。

仮説思考のミニシリーズVol.3で「普段から指標を見て、施策の結果を評価して、小さなサイクルを回す」と整理しました。問いの素振りも同じです。毎日の小さな練習が積み重なって、いざという時に問いが自然に出てくる筋力になる。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • 問いの素振りは毎日5分の練習。特別な訓練ではなく、日常の仕事の中で「ここで問いを立てられたな」と気づく回路を作ること
  • 3つのメニュー。ニュースに問いを立てる、昨日の会議を振り返る、AIに問いを投げて壁打ちする。どれか1つを1日1回やるだけ
  • 続けるコツは完璧を目指さないこと。週3回で十分。タイミングを固定すると習慣になりやすい

次回は「『いい問いだったか』を振り返る3つの基準」。素振りで問いを立てる練習をしたら、次は「その問いが良かったか」を評価する基準が必要です。自分で自分にフィードバックを出す方法を整理します。