マトリクスで整理する——2つの軸で比較・分類する

マトリクスで整理する——2つの軸で比較・分類する

マトリクスとは、2つの軸を掛け合わせて、複数のものを比較・分類する構造化の型です。

この記事でわかること

  • マトリクスの基本的な考え方と使いどころ
  • 軸の選び方で結論がまったく変わる仕組み
  • マトリクスが苦手な人のための「軸を見つける方法」

施策の案が5つある。どれから手をつけるべきか。ツールの候補が3つある。どれを選ぶべきか。

こうした「複数のものを比べて判断したい」場面で力を発揮するのがマトリクスです。ツリーが「大きなものを小さく分ける」型だったのに対し、マトリクスは「並べて比べる」型です。

マトリクスの基本:2つの軸で場所を決める

マトリクスの考え方はシンプルです。縦軸と横軸を決めて、対象をその中に配置する。

たとえば、施策の優先順位を決める場面。縦軸を「インパクトの大きさ」、横軸を「実行の難しさ」にします。

インパクトが大きくて実行が簡単なもの→真っ先にやる。インパクトが大きいけれど実行が難しいもの→計画を立ててからやる。インパクトが小さくて実行が簡単なもの→余裕があればやる。インパクトが小さくて実行も難しいもの→やらない。

5つの施策をこの4つのマスに配置するだけで、優先順位が見えてきます。頭の中で「なんとなくこれが大事」と思っていたものが、軸の上に置くことで根拠を持った判断に変わります。

マトリクスが効く場面

マトリクスが特に役に立つのは、以下の3つの場面です。

  • 優先順位をつけたいとき。 施策やタスクが複数あって、どれから手をつけるか迷っている。「インパクト × 難易度」「緊急度 × 重要度」のような軸で配置すると、順番が見えます。
  • 選択肢を比較したいとき。 ツールの候補、採用の候補、外注先の候補。比較したい項目を軸にして並べると、「何がどう違うのか」が一目で分かります。
  • 分類したいとき。 顧客を「利用頻度 × 契約金額」で4つに分類する。課題を「自社で解決できるか × 影響の大きさ」で分類する。分類すると、グループごとに打ち手を変えられます。

軸の選び方で、結論は変わる

マトリクスで一番大事なのは、軸の選び方です。同じ施策でも、どの軸で整理するかによって優先順位がまったく変わります。

「コスト × 効果」で整理すると、低コストで高効果な施策Aが1位になる。でも「緊急度 × 重要度」で整理すると、コストは高いけれど今すぐ必要な施策Bが1位になる。

同じ情報でも、軸を変えると見え方が変わる。 これがマトリクスの最大の特徴であり、最大の注意点です。

だからこそ「何のために比較するのか」を先に決めることが大事です。短期の成果を出したいなら「インパクト × スピード」。リソースが限られているなら「効果 × コスト」。目的が違えば、選ぶべき軸も変わります。

軸が思いつかないときの3つのヒント

「2つの軸を決めろと言われても、何を軸にすればいいか分からない」。これはマトリクス初心者に一番多い壁です。

ヒント①:判断で迷っている理由を軸にする

「この施策をやるべきか迷っている」。なぜ迷っているかを考えると、だいたい2つの要素がぶつかっています。「効果はありそうだけど、コストが高い」。これはもう「効果 × コスト」の軸が見えています。「急ぎの仕事だけど、重要度は低い」。これは「緊急度 × 重要度」です。

迷いの中に、軸が隠れています。

ヒント②:よく使われる定番の軸から選ぶ

ゼロから考える必要はありません。ビジネスでよく使われる軸の組み合わせがあります。

  • 「インパクト × 実行難易度」:施策の優先順位。
  • 「緊急度 × 重要度」:タスクの優先順位。
  • 「コスト × 効果」:投資判断。
  • 「利用頻度 × 満足度」:顧客分析。
  • 「自社の強み × 市場の魅力」:事業判断。

まずはこの中から近いものを選んで、合わなければ調整する。ゼロから軸を作るより、はるかに速く動けます。

ヒント③:まず1つ軸を決めて、もう1つは「それだけでは判断できない理由」にする

「効果が大きいかどうかで選びたい」。でも効果だけでは決められない。なぜか。「コストも考えないといけないから」。これで「効果 × コスト」の2軸が揃います。

1つ目の軸は比較的すぐに決まります。2つ目が難しい。でも「1つ目の軸だけでは足りない理由」を考えると、2つ目が見えてきます。

軸が決まったら、ざっくり配置する

軸が決まったら、対象をマスに配置します。ここで大事なのは、正確さを求めすぎないことです。

施策Aのインパクトが「大」なのか「中」なのか、厳密に数値化する必要はありません。「他と比べて大きい方か小さい方か」。この相対的な判断で十分です。

マトリクスの目的は、正確な点数をつけることではなく、全体の中での位置関係を見えるようにすること。 ざっくり配置してみて、「この施策とこの施策が同じマスに入るのは違和感がある」と思ったら位置を調整する。それでいいのです。

完璧な配置を目指して手が止まるより、ざっくり配置して全体を見渡す方が、判断は前に進みます。

マトリクスの落とし穴:軸が2つで足りないとき

マトリクスは2つの軸で整理する型です。でも、現実の判断に影響する要素は2つでは収まらないことがあります。

施策の優先順位を「インパクト × 難易度」で決めた。でも、実行に必要な人員が確保できるかという「リソース」の要素が抜けている。この軸では見えないが、実は決定的に重要な要素がある。

2軸で整理した結果が「なんかしっくり来ない」と感じたら、3つ目の要素が隠れているサイン。 その場合は、軸を入れ替えてもう1回やってみる。あるいはツリーの回で紹介した方法と同じで、AIに別の軸の組み合わせを出してもらい、自分のものと見比べるのも有効です。

2軸で整理するのはあくまで「見渡すための道具」です。それだけで最終判断する必要はありません。マトリクスで全体の傾向をつかんだうえで、個別の事情を加味して最終判断する。このバランスが実務では大事です。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • マトリクスは2つの軸を掛け合わせて、複数のものを比較・分類する型。優先順位づけ、選択肢の比較、分類に有効
  • 軸の選び方で結論が変わる。「何のために比較するのか」を先に決めてから軸を選ぶ
  • 軸が思いつかないときは「迷っている理由」を軸にする、定番の組み合わせから選ぶ、1つ目の軸だけでは足りない理由を2つ目にする

ぜひ一度、今抱えているタスクを「緊急度 × 重要度」のマトリクスに配置してみてください。頭の中で「あれもこれも」と混乱していたものが、位置関係として見えるようになります。

次回は「プロセス」を扱います。ツリーが「分ける」、マトリクスが「比べる」だったのに対し、プロセスは「流れを見る」型です。時系列や手順を可視化することで、ボトルネックや因果関係が見えてきます。