ツリーとは、大きなものを上から下に枝分かれさせて、小さな要素に切り分ける構造化の型です。
この記事でわかること
- ツリー(ロジックツリー)の基本的な考え方
- 分解の粒度をどこで止めるか
- ツリーが苦手な人のための「下から積み上げる」方法
「売上を上げるにはどうすればいいか」。この問いが大きすぎて動けないとき、まずやるべきは分解です。
売上を「新規」と「既存」に分ける。新規をさらに「リード数」「商談化率」「成約率」に分ける。こうやって枝分かれさせていくと、大きな塊が扱えるサイズの要素に変わっていく。
これがツリーです。4つの構造化パターンの中でも最も基本的で、最も使用頻度が高い型です。
ツリーの基本:上から下に分ける
ツリーの考え方はシンプルです。大きなものを、いくつかの小さなものに分ける。分けたものをさらに小さく分ける。これを繰り返す。
「売上」を1段目で分けると「新規売上」「既存売上」になります。
「新規売上」を2段目で分けると「リード数」「商談化率」「成約率」「平均単価」になります。
「リード数」を3段目で分けると「Web問い合わせ」「紹介」「展示会」「広告」になります。
分けるたびに具体的になる。具体的になるほど、手が打てるようになる。「売上を上げろ」では動けないが、「Web問い合わせからのリード数が先月比で30%減っている。原因は何か」なら、次にやることが見えます。
分解の方向は1つではない
同じ「売上」でも、分け方は1通りではありません。

- 構成要素で分ける:売上 = 客数 × 単価 × 購入頻度。数字の関係で分解する。
- プロセスで分ける:売上 = 認知 → 検討 → 購入 → 継続。顧客の行動ステップで分解する。
- セグメントで分ける:売上 = 業界A + 業界B + 業界C。顧客の属性で分解する。
どの方向で分けるかによって、見えるものが変わります。構成要素で分ければ「単価が下がっている」と分かる。プロセスで分ければ「検討から購入への転換率が落ちている」と分かる。セグメントで分ければ「業界Bだけ伸びている」と分かる。
正しい分け方が1つあるわけではありません。 目的に合った方向で分けることが大事です。原因を特定したいなら構成要素で分ける。ボトルネックを見つけたいならプロセスで分ける。注力先を決めたいならセグメントで分ける。
分解の粒度:どこで止めるか
ツリーはどこまでも細かく分けられます。でも、際限なく分けても使いものになりません。
「Web問い合わせ」をさらに分けて「Google検索経由」「SNS経由」「メルマガ経由」。さらに「Google検索」を「ブランド検索」「一般検索」に分ける。さらに一般検索を「キーワードA」「キーワードB」に分ける。
どこまで掘っても終わりがありません。実務では「ここまで分ければ、手が打てる」というラインで止める必要があります。
止めどきの目安は「その粒度で具体的なアクションが見えるか」です。
「新規売上が下がっている」→ まだ粗い。何をすればいいか分からない。
「Web問い合わせからのリード数が減っている」→ この粒度なら、Webサイトのアクセス解析を見る、フォームの導線を確認するなど、具体的なアクションが見える。
アクションが見える粒度まで分ける。それ以上は掘らない。 これがツリーの実務的な使い方です。
「上から分ける」が難しいと感じたら
ここまで読んで「分け方が思いつかない」と感じた方もいるかもしれません。「売上を新規と既存に分ける」と言われても、その分け方自体がどこから出てくるのか分からない。
これは自然なことです。上からきれいに分けられるのは、その領域の構造をすでに知っている人の動き方です。初めてのテーマや慣れていない領域では、最初から正しいツリーを描くのは難しい。
そういうときは、上からではなく下から積み上げる方法を使います。
ステップ1:思いつくことを全部書き出す
「売上が下がった原因」について、思いつくことを何でも書きます。きれいに整理しようとしなくていい。順番も気にしなくていい。
「大型案件が失注した」「問い合わせは増えている」「既存顧客の反応が悪い」「営業の訪問件数が減っている」「競合が値下げした」「新しい広告を出していない」「サポートへの不満が増えている」「プロダクトの機能が足りない」。
とにかく出す。10個でも15個でも。この段階では質より量です。
ステップ2:似たものをグループにする
書き出した項目を眺めて、「これとこれは近いな」というものをまとめます。
「大型案件が失注した」「営業の訪問件数が減っている」「新しい広告を出していない」→ 新規の獲得に関すること。
「既存顧客の反応が悪い」「サポートへの不満が増えている」→ 既存顧客の維持に関すること。
「競合が値下げした」「プロダクトの機能が足りない」→ 競争環境に関すること。
ステップ3:グループに名前をつける
まとめたグループに、それぞれ名前をつけます。「新規獲得の問題」「既存維持の問題」「競争環境の問題」。
これで、下から積み上げたツリーができました。最初から「新規/既存/競争環境」と分けられなくても、書き出してグループにすれば同じ構造にたどり着けます。
迷ったときは「まず2つに分ける」
下から積み上げる方法でも、グルーピングの段階で「どう分ければいいか分からない」となることがあります。3つに分けるか4つに分けるか、どのグループに入れるか迷う。
そういうときは、まず2つに分けてみてください。
「これは社内の問題か、社外の問題か」「自分たちで変えられることか、変えられないことか」「短期で効く話か、長期の話か」。
2択なら、どんな項目でもどちらかに振り分けられます。2つに分けた後、片方が多すぎたら、そこをもう一度2つに分ける。
3つ4つに一度に分けようとするから難しくなる。2つに分けることを繰り返すだけで、ツリーはできます。
「正しい分け方」を探さない
もうひとつ、ツリーが苦手な人に共通する傾向があります。「正しい分け方があるはずだ」と思って固まってしまうことです。
教科書に載っているような、きれいなロジックツリーを最初から描こうとする。でも完璧な分け方が見つからないから、手が止まる。
実際には、目的が違えば分け方も変わります。同じ「売上が下がった原因」でも、営業会議で使うならプロセスで分けた方がいいし、経営会議で使うならセグメントで分けた方がいい。唯一の正解はありません。
まず分けてみて、しっくり来なければ分け直せばいい。 ツリーは一発で完成させるものではなく、何度か書き直して整えるものです。最初の分け方が間違いでも、分けたこと自体に価値があります。分けてみて初めて「この分け方だと見えないものがある」と気づけるからです。
それでも手が止まるなら、AIの出力と見比べる
ここまで試しても「自分のグルーピングが合っているのか分からない」「何か抜けている気がするけど、何が抜けているのか分からない」と感じることがあります。
そういうときは、AIに同じテーマでツリーを出してもらい、自分のものと見比べてみてください。
大事なのは順番です。先に自分で書き出してから、AIに出させる。 AIに先に出させると、その構造を鵜呑みにするしかなくなります。自分で一度やっているからこそ、AIの出力を見て「この切り口は思いつかなかった」「この軸で分けた方がたしかにすっきりする」と気づける。
逆に「AIはこう分けたけど、自分の現場ではこの切り口の方が実態に合っている」と判断できることもあります。AIは一般的な構造を出すのは得意ですが、その会社の事情や背景は知りません。
自分の分け方 × AIの分け方を見比べる。 どちらが正解かではなく、比べることで抜けや視点の偏りに気づく。これがツリーの精度を上げる実践的な方法です。
よくある失敗と防ぎ方
最後に、ツリーを使い始めたときに起きやすい2つの失敗を押さえておきます。
失敗①:分け方が思いつきの列挙になる
「売上を上げるには」→「営業を増やす」「広告を打つ」「値段を下げる」。これは分解ではなく、施策の列挙です。ツリーの1段目は「売上の構成要素」であるべきで、「やること」ではありません。
防ぎ方は、1段目で「何を分けているか」を明確にすることです。売上の「構成要素」を分けているのか、「顧客セグメント」を分けているのか、「プロセス」を分けているのか。分けている対象を意識するだけで、施策の列挙を防げます。
失敗②:分けた結果が重なる
「新規顧客」「大手顧客」「Web経由の顧客」。この3つは重なっています。新規で大手でWeb経由という顧客は、3つすべてに入ってしまう。こうなると、数字を足しても元に戻りません。
防ぎ方は、1つの分岐では同じ軸で分けることです。「新規/既存」で分けるか、「大手/中小」で分けるか、「Web/紹介/展示会」で分けるか。1つの軸を決めて分ける。別の軸で分けたい場合は、分けた先でもう1段掘ります。
まとめ
この記事のポイントを3つにまとめます。
- ツリーは大きなものを上から下に枝分かれさせて、小さな要素に分解する型。粒度は「アクションが見えるか」で止める
- 上から分けるのが難しければ、まず全部書き出して→グループにして→名前をつける。下から積み上げてもツリーはできる
- 「正しい分け方」を探して固まるより、まず2つに分けてみる。自分で分けてからAIの出力と見比べると、抜けや偏りに気づける
明日の会議が終わったあと、出てきた論点をメモに書き出してみてください。書き出したら、似たものをグループにしてみる。それだけで、ツリーの第一歩になります。
次回は「マトリクス」を扱います。ツリーが「大きなものを小さく分ける」型だったのに対し、マトリクスは「2つの軸で比較・分類する」型です。軸の選び方ひとつで、同じ情報の見え方がまったく変わります。


