1on1で「考える力」を育てる

1on1で「考える力」を育てる

1on1では答えを教えるのではなく、問いで思考を促す。それが「考える力」を育てる基本です。

この記事でわかること

  • 1on1で使える「考える力を育てる問い」4つ
  • 「答えを教えたくなる誘惑」に抗う方法
  • AIを1on1の事前準備ツールとして活用するコツ

1on1は、メンバーの「考える力」を育てる最良の場面です。

チームの意思決定の質を上げるには、個人の思考力を底上げする必要があります。研修や勉強会も有効ですが、もっとも即効性があるのは日常の1on1です。週1回、30分の対話の中で、クリティカルシンキングのエッセンスを自然に伝えられます。

ポイントは1つ。答えを教えるのではなく、問いで思考を促すことです。

1on1で使える「考える力を育てる問い」

「それは事実? それとも解釈?」

メンバーが「このやり方がいいと思います」と言ったとき。第3回で扱った「事実と意見を分ける」の応用です。

「そう判断した根拠は何ですか。データがありますか。それとも、印象で感じていますか」。責めるニュアンスではなく、一緒に整理するトーンで聞く。

メンバーは、最初は「いや、なんとなく」と答えるかもしれません。でも、この問いを繰り返し受けるうちに、「自分の判断に根拠はあるか」を自然に考えるようになります。

「他にどんな方法がある?」

メンバーが「Aでいきたいです」と提案したとき。第18回の選択肢拡張の応用です。

「A案はわかった。B案やC案は検討しましたか。3つめの選択肢があるとしたら何だと思いますか」。2択で止まっているメンバーに、3つめを考える習慣をつけさせます。

「うまくいかない場合、何が原因だと思う?」

メンバーが自信を持って提案してきたとき。第22回のリスク思考の応用です。

楽観的な提案に対して、「うまくいかないとしたら、最大の原因は何だと思う?」と聞く。批判しているのではなく、リスクを一緒に考える姿勢です。

「誰かがこの提案に反対するとしたら、どんな理由で?」

第12回の反対思考の応用です。メンバー自身に反対意見を考えさせる。自分の提案の弱点を自分で見つけられるようになれば、思考の深さが変わります。

問い対応する技術(回)使う場面
「それは事実? それとも解釈?」事実と意見を分ける(第3回)「〜がいいと思います」と言ったとき
「他にどんな方法がある?」選択肢を増やす(第18回)1案だけ持ってきたとき
「うまくいかない場合、何が原因だと思う?」リスク思考(第22回)楽観的な提案に対して
「誰かが反対するとしたら?」反対思考(第12回)自分で弱点を見つけさせたいとき

答えを教えたくなる誘惑に抗う

マネージャーにとって、答えを教えるほうが圧倒的に早い。メンバーが悩んでいるとき、「こうすればいい」と言いたくなります。

でも、答えを教え続けると、メンバーは「考えなくても答えをもらえる」と学習します。結果として、自分で考える力が育たない。

答えを教える場面と、問いで考えさせる場面を使い分けます。緊急度が高い場面や、メンバーの知識が明らかに不足している場面では教える。時間的余裕がある場面では、問いで考えさせる。

目安として、1on1では「教える」と「問う」の比率を3:7にすることをめざします。7割は問いで促す。

AIを1on1の「事前準備ツール」として使う

メンバーに「1on1の前に、自分の提案をAIに壁打ちしてきて」と依頼する。具体的には「AIに自分の提案の弱点を3つ聞いてきて」。

この準備をした上で1on1に来ると、議論の質がまったく違います。メンバーはすでに反論を検討した状態で来る。マネージャーは、そこからさらに深い議論ができる。

AIは「考えない理由」になってはいけない。 AIは「考える前の壁打ち相手」として使う。考えた結果をAIに検証してもらう。この使い方なら、AIがメンバーの思考力を底上げする道具になります。

「問い」の力は、繰り返しで効く

1回問われただけでは、習慣にはなりません。毎週の1on1で同じ種類の問いを繰り返す。3か月もすれば、メンバーは自分で「根拠は何か」「他の案はないか」「うまくいかないとしたら」と考えるようになります。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • 1on1では「それは事実?」「他に方法は?」「うまくいかない場合は?」「反対理由は?」の4つの問いを使う
  • 「教える」と「問う」の比率は3:7をめざす
  • メンバーに「1on1の前に、AIに弱点を3つ聞いてきて」と依頼すると議論の質が上がる

次回は「チームの意思決定の質を上げる仕組み」をやります。

個人の思考力を、チーム全体の意思決定の質にどうつなげるか。テンプレート、反論役、振り返りの3つの仕組みを整理します。