「無料のAIだと、学習リスクを考慮して、結局一般的なことしか聞けない——」
社内情報を入力したいけれど、外部のAIサービスに学習されるリスクは無視できない。だから、自社のことでも一般論しか質問できない。「もう一歩踏み込んで聞きたい」と思っても、入力する手前で止まってしまう。
この壁が外れたとき、AIの使い道は大きく広がります。
この記事でわかること
格正建設株式会社のN氏が実践している、社内の業務情報を入れて使うことで業務の棚卸しが進み、AIを組み込めるようになった事例を紹介。請求書集計を実例に、棚卸しからテンプレート化、精度を上げて運用に組み込むまでの3STEPを解説します。
- 学習リスクを気にせず社内情報を入れられるようになって変わった、AIの使い道
- 請求書のPDFを集計してCSV出力する方法
- 業務の棚卸し→テンプレート化→運用への組み込みの3STEP
こんな経験はありませんか?
- 無料のAIで業務情報を交えたやり取りをしたいが、学習リスクを考えてできない
- 結局、一般的な内容しか聞けず、AIの使い道が広がらない
AIを業務で活用するには、「社内の業務情報を入れて聞ける」ことが欠かせません。
この記事では、格正建設株式会社で総務・人事・経理を担当するN氏が実践している、社内の業務情報を入れて使うことで業務の棚卸しが進み、AIを実務に組み込めるようになった事例を紹介します。
Before / After
Before(無料AI時代の使い方)
学習リスクを考慮して、社内の業務情報は入力しない →自社のことでも一般的な内容しか質問できない →AIの使い道が、自分の疑問解消や一般的な調べ物に限られる
「もう一歩踏み込んで聞きたい」が叶わない状態でした。
After(Stella AI for Biz活用後)
学習に使われない前提で、社内の業務情報も入れて使えるようになった →自社の内容に踏み込んだ、聞きにくいことも質問できるように →業務の棚卸しが進み、請求書集計や議事録など、実務にAIを組み込めるようになった
活用している業務の全体像
N氏は現在、複数の業務でStella AIを活用しています。
- 毎週の部会の議事録作成:対面会議を録音し、音声をアップロードして文字起こし
- 建設業で活用できる補助金・助成金の調査:プロンプトをテンプレート化していつでも調査可能に
- 請求書のPDF集計:現場ごとの原価管理のための集計を、PDF読み込みからCSV出力
社内の業務情報を入れて使えるようになり、こうした業務へのAIの組み込みが進みました。
この記事では、その中でも多くの中小企業に共通する課題である「請求書の集計」を実例として、業務の棚卸しから運用までの3STEPを紹介します。
実践STEP:請求書集計を例に、3ステップで紹介
N氏の会社では、建設現場ごとの原価管理のため、外部から届く請求書の集計が必要です。なかでもPDF形式のみで届き、CSV等での出力に対応していない請求書もあります。そのため従来は、事務員がExcel上で1件ずつ手入力で集計していました。
この業務をStella AIで自動化していくプロセスを、3つのSTEPに分けて紹介します。
STEP1|業務の棚卸しから始める
最初のSTEPは、業務を実務レベルで一つひとつ見て、「これってAIでできるんじゃないか」を探すことです。
「実務レベルでやっていることの状況を把握した上で、いちいちExcelで打ち込まなくてもStella AIでできるんじゃないか、という考えを持った」
請求書集計も、この考えから業務を棚卸しし、候補に挙がりました。 「事務員がExcelで1件ずつ打ち込んでいる」「現場ごとに手動で振り分ける必要がある」「毎月発生する」—— こうした特徴を持つ業務は、AIで効率化できる業務の1つです。
ここがポイント
棚卸しの起点は、「業務をAIに合わせる」のではなく「時間や手間がかかっている業務を見つける」ことです。 「Excelで打ち込んでいる」「ネットで毎回検索している」「手作業で集計している」—— こうしたパターン化された業務こそ、AIで効率化できる候補になります。
STEP2|プロンプトをテンプレート化する
棚卸しで見つけた業務は、プロンプトをテンプレート化することで、誰でも・いつでも・同じように使える形に整えます。
N氏は請求書集計用に、以下のようなプロンプトでテンプレートを作成しています。
▼ プロンプトの構成
あなたは請求書集計の専門家です。
請求書から出力項目の内容を抽出し、表形式でまとめてください。
# 前提条件:{自社の業務上の前提を記載}
# 出力項目
- 取引先:請求書の発行元の企業名・店舗名
- 品目:請求対象となっている項目・サービスのカテゴリ名
- 数量:請求対象の数量
- 単価:1単位あたりの金額
- 金額:品目ごとの小計金額
- 商品名:請求対象となっている商品・サービスの具体名このテンプレートを開いてPDFをアップロードするだけで、表形式で集計結果が出力されます。
ここがポイント
テンプレート化の際に重要なのは、「出力したい項目を明確にする」ことです。
請求書は発行元によって様式が異なります。 様式ごとに別のプロンプトを作る方法もありますが、出力したい項目の定義をプロンプトに書いておくことで、様式が異なっても一つのプロンプトで対応できます。 「完全一致の用語で出して」というよりも、「この項目はこういう内容のものですよ」と定義を明記する。 これによって、様式の違いを吸収しながら必要な情報を引っ張ってこられます。
STEP3|精度を運用しながら高め、業務に組み込む
テンプレート化したプロンプトは、最初から100%の精度を求めません。 最初は7〜8割の精度でも始め、運用しながら改良を重ねて精度を上げていく進め方がポイントです。
N氏の請求書集計も、最初の精度はそれほど高くありませんでしたが、改良を重ねて現在は8〜9割の精度で稼働しています。
「内容を確認したうえで、プロンプトも含めて、指示の仕方などを改良していきつつ、より100%に近い確率で出せるようにしていきたい」
改良のサイクル
精度を上げるための改良は、次の4つのステップを繰り返します。
① 出力結果を確認する
集計結果と元のPDFを突き合わせて、抜けや誤りがないかをチェックします。たとえば、20項目あるはずの請求書から15番目と16番目だけが集計から漏れている、といった部分的な抜けが起きることがあります。
② 足りない点・問題箇所を特定する
抜けや誤りが見つかった場合、原因の深堀りを行います。
例:
- 入力データの形式:ExcelをPDFに変換する際に段ズレが起きている可能性
- プロンプトの指示:項目の定義が曖昧で、AIが判断に迷っている可能性
- AIの処理特性:計算や数値処理が苦手な部分で誤差が出ている可能性
N氏も最初、抜けが出た原因がわからず悩みましたが、入力データ側を見直すことで解消できたケースもあったといいます。
③ プロンプトや入力データを改良する
特定した原因に応じて、対策を打ちます。
- 項目の定義をより詳細に書き直す(「税抜き金額」「税込金額」など対象の違いを明示)
- 入力データの形式を見直す
④ 再度試して精度を確認する
改良したプロンプトで再度実行し、精度がどう変わったかを確認します。7割→8割→9割と、運用しながら少しずつ精度を上げていきます。
ここがポイント
100%の正確性が求められる業務では、必ずAIの集計結果は人がチェックする前提で運用します。それでも、Excelで1件ずつ手入力していた工数と比べれば、チェックだけで済む作業に変わるのは大きな変化です。
精度100%を目指して導入を待つよりも、「7〜8割の精度から始めて、運用しながら改良する」進め方のほうが、結果的に早く実務に組み込めます。改良のループを回し続けること自体が、AI活用の精度と幅を広げていきます。
得られた成果
3つのSTEPを実践することで、N氏の業務には次の変化が生まれました。
① 請求書集計の精度を、運用しながら上げていくサイクルが回るようになった
最初は精度が安定しなかった請求書集計も、改良サイクルを回すことで現在は8〜9割の精度に到達。今後さらに改良することで100%に近づけられる見通しが立っています。Excelで1件ずつ手入力していた事務作業が、AIによる集計+人によるチェックへと変わりました。
② 業務の棚卸しから組み込みまでの「型」ができた
請求書集計で確立した「棚卸し→テンプレート化→精度改良」の進め方は、議事録作成や補助金調査など、他の業務にも展開できる型になっています。一度型ができれば、新しい業務をAI化する際の判断・実装が早くなります。
③ 「考え方の変化」が、その後の業務改善を加速させた
最も大きな変化として、N氏は「考え方の変化」を挙げます。
「具体的にやり方が変わっただけではなく、考え方が変わったのが一番。社内の業務情報を入れて使えるようになったことで、聞きにくいことを恐れず聞けるようになった。」
社内の業務情報を入れて踏み込んで聞けるようになったことで、業務改善の発想自体が広がっています。
格正建設株式会社 N氏の声
「もともと、無料のAIサービスを使う上で、情報漏洩が一番怖かったんですよ。一時期ニュースにもなっていましたし、情報漏洩のリスクは年々高まっているなと感じていて。」
Stella AI for Bizを使い始めて、その心理的な壁が外れたといいます。
「Stella AIだとデータが学習されないということだったので、恐れることなく入れられる情報が増えたんです。今までは無料のChatGPTで、自社のことでも一般的な内容しか聞いていなかった。より自社の内容に踏み込んだ、聞きにくいなと思っていたことを、恐れず聞けるようになった。これは、すごく考え方が変わったところです。」
応用・発展ヒント
N氏の「業務棚卸し→テンプレート化→精度を改良しながら運用」アプローチは、請求書集計以外の業務にも展開可能です。
① 毎週の部会議事録:録音アップロードで定型化
N氏は毎週の部会で、対面会議の音声を録音し、Stella AIにアップロードして文字起こしを実施しています。録音→アップロード→出力の流れがそのまま定型業務に組み込まれており、毎週の繰り返し業務として定着しています。
② 改良サイクルを意識した運用
請求書集計に限らず、AI活用は最初の精度ではなく、改良サイクルの回し方で差がつきます。 出力を確認 → 問題箇所を特定 → プロンプトや入力を改良 → 再度試す。 このループを回し続けることが、AIを「便利な道具」から「実務に組み込まれたツール」に変えていきます。
まとめ
無料のAIサービスでは、学習リスクを考慮して社内の業務情報を入力できず、結果的に「自社のことでも一般的な内容しか聞けない」状態が続いていました。
学習に使われないAIに変えたことで、社内の業務情報を入れて踏み込んだ質問ができるようになり、「これってAIでできるんじゃないか」と業務の棚卸しが始まった—— これが、N氏のStella AI活用の出発点です。
業務の棚卸し→プロンプトのテンプレート化→精度を改良しながら運用—— この3STEPは、請求書集計に限らず、議事録作成・その他の定型業務にも応用できます。特にSTEP3の「改良サイクル」は、最初から完璧を目指さず、運用しながら精度を上げていくという、AI活用全般に共通する重要なポイントです。
「無料AIで一般論しか聞けていない」と感じている方は、まず一つの業務から試してみてください。社内の業務情報を入れて使える前提が整うだけで、「これもAIでできるんじゃないか」と気づける業務が、想像以上に多く見つかるはずです。
この記事で紹介した仕組みは、Stella AI for Bizを活用して実現しています。


