AIへの指示をいくら工夫しても、「何を聞くか」が間違っていたら意味がありません。プロンプトの前に、問いを設計する。この順番が大事です。
この記事でわかること
- プロンプトと問いの違い
- 「問いの設計」がないままAIを使うと何が起きるか
- プロンプトの前に設計すべきこと
「売上が下がっています。原因を分析して、改善策を提案してください。」
丁寧に書いたプロンプトです。AIは答えてくれます。「顧客満足度の向上が重要です」「マーケティング施策を強化しましょう」「価格戦略を見直す余地があります」。
どれも間違いではない。でも、使えない。自社の状況に合っていない。一般論しか出てこない。
プロンプトの書き方が悪かったのか。いいえ。そもそも「何を聞くか」が定まっていなかったのが原因です。
プロンプトと問いは違う
プロンプトとは、AIに渡す具体的な指示文です。問いとは、その指示の手前にある「何を知りたいか」「何を決めたいか」です。
プロンプトは「AIへの伝え方」。問いは「何をAIに聞くか」。この2つは別のものです。
冒頭の例で言えば、プロンプトは「売上が下がっています。原因を分析して」。では問いは何か。それが決まっていなかった。
「売上が目標に対して15%足りない。ギャップの主因は新規の減少か、既存の解約か、単価の低下か。どれが一番大きいか」。これが問いです。
この問いが先にあれば、プロンプトは自然に変わります。「売上が目標に対して15%未達です。新規商談数、既存の解約率、平均単価のそれぞれのデータを添付します。ギャップの主因がどこにあるか、データから特定してください」。
同じ「売上の分析」でも、問いがあるかないかでプロンプトがまったく違う。そして出てくる答えもまったく違います。
プロンプトの本質は、AIの出力を「今回の仕事に合う形へ狭める条件整理」です。何も指定しなければ、AIは一般的で自然そうな方向に寄っていく。そこに焦点・深さ・形式・優先順位を指定することで、出力を今回の仕事に合わせる。これがプロンプトの役割です。(詳しくは生成AIの仕組み入門Vol.5「プロンプトで何が変わるのか」)
条件整理は大事です。でも、条件を整理する「前」に、そもそも何を聞くかが決まっていなければ、整理のしようがない。問いの設計は、条件整理のさらに手前にあるものです。
「問いの設計」がないとAIに振り回される
問いを設計せずにAIを使うと、3つのパターンで失敗します。
1つ目は丸投げ。「売上が下がっています。どうすればいいですか?」。これはVol.4で整理した「大きすぎる問い」です。問いが大きすぎるから、答えも大きすぎる。
2つ目は手段から入る。「このデータをグラフにして」「この文章を要約して」。AIは実行してくれます。グラフはできた。要約もできた。でも「そのグラフで何を判断するのか」が決まっていない。手段は実行されたが、目的が不明確。
3つ目が一番厄介で、AIの出力に引っ張られる。問いを持たずにAIに何か出させると、AIが出したものが「答え」に見えてしまう。AIが「この3つが原因です」と言えば、「なるほど、この3つか」と受け入れてしまう。Vol.15で整理した「AIの出力をそのまま前提にしてはいけない」と同じ構造です。
3つに共通するのは、「何を知りたいか」が定まっていないこと。 問いがないままAIを使うと、AIに振り回されます。
プロンプトの前に、3つ決める
AIに何かを頼む前に、3つのことを決めます。
① ゴール:この作業で何を決めたいのか。
「売上データを分析して」の前に、「来四半期の営業リソース配分を決めたい。そのために今四半期のギャップの主因を特定したい」。ゴールが決まると、分析の方向が決まります。
② 問い:具体的に何を知りたいのか。
ゴールが決まったら、シリーズで学んだ操作技法を使って問いを設計する。「ギャップの主因は新規・既存・単価のどこか」(見渡して絞る)。「この傾向は一時的か構造的か」(時間軸)。問いが具体的になれば、プロンプトは自然と具体的になります。
③ 用途:AIの出力を誰がどう使うのか。
「来週の経営会議で、配分案の根拠データとして使う」。用途が決まると、求める粒度や形式も決まります。
この3つが決まった状態でプロンプトを書くと、出力の質が劇的に変わります。
実際にプロンプトを書くときは、AIに渡す情報も整理します。具体的には、目的(何を達成したいか)、前提(背景・状況・対象)、指示(何をさせるか)、条件(予算・期限・制約)、形式(出力の長さ・体裁)。この5つが揃うと、AIは一般論で埋める必要がなくなります。(詳しくはAI定着ラボVol.6「「なんか違う」が続くのは、渡している情報のせいだ」)
つまり、問いの設計(ゴール・問い・用途)で「何を聞くか」を決め、渡す情報(目的・前提・指示・条件・形式)で「どう伝えるか」を整える。この両方が揃って初めて、プロンプトが機能します。逆に言えば、どちらか片方だけでは足りません。
同じ場面をBefore/Afterで比べる

場面:来週の経営会議に向けて、売上データの分析をAIに頼む。
Before(問いの設計なし):
「添付の売上データを分析して、何か気づいたことを教えてください」
AIの回答:「売上は前月比5%減少しています。地域別ではA地域の減少が顕著です。季節要因の影響も考えられます。顧客セグメント別では中小企業の比率が上昇傾向にあります」
情報は出てきた。でも「で、経営会議で何を言えばいいの?」が分からない。
After(問いの設計あり):
「売上が目標に対して15%未達です。新規商談数、既存の解約率、平均単価のデータを添付します。ギャップの主因がどこにあるか、データから特定してください。それぞれの寄与度をパーセントで出してください。迎合せず、データだけを冷静に見て判断してください」
AIの回答:「ギャップの15%のうち、新規商談数の減少が約70%、既存の解約増加が約20%、単価の低下が約10%を占めています。新規商談数が主因です」
経営会議で「ギャップの7割は新規の減少。営業リソースはリード獲得に重点配分すべき」と言える。判断に直結する。
違いはプロンプトのテクニックではありません。問いの設計の有無です。
まとめ
この記事のポイントを3つにまとめます。
- プロンプトは「AIへの伝え方」、問いは「何をAIに聞くか」。伝え方をいくら工夫しても、聞くこと自体がずれていたら良い答えは返ってこない
- AIに頼む前にゴール・問い・用途の3つを決める。この3つが決まった状態でプロンプトを書くと、出力の質が劇的に変わる
- プロンプトのテクニックより、問いの設計を学ぶ方が効果が大きい。問いが具体的なら、プロンプトは自然と具体的になる
次回は後編「AIへの問いを設計する——実践編」。データ分析、企画書作成、顧客対応など、具体的な業務場面で「問いの設計→プロンプト」の流れを実践します。


