「なんか違う」が続くのは、渡している情報のせいだ

「なんか違う」が続くのは、渡している情報のせいだ

この記事でわかること

  • 生成AIの出力がズレる原因の多くは、性能ではなく「渡している情報」にある
  • 「指示」だけでなく「背景」を渡すと出力が変わる理由
  • 忙しい現場でも背景を渡しやすくする方法

生成AIを使っていると、どこかでこう思う瞬間があります。

「なんか違うな」

間違っているわけではない。でも、欲しかった答えではない。一応それっぽい。でも浅い。一般論っぽい。自分の仕事にそのまま持っていける感じがしない。

しかも、たまにうまくいくからやっかいです。昨日はかなり良かったのに、今日は微妙。同じように頼んだつもりなのに、出てくるものが違う。

このとき、多くの人は「やっぱりAIの性能の問題かな」と思います。モデルの差はもちろんあります。でも、現場で起きる「なんか違う」の多くは、性能とは別のところに原因があります。

こちらが渡している情報が足りていない。 実務ではこのケースがかなり多いです。

AIは「察してくれる相手」ではない

人に仕事を頼むときは、多少雑でも通じることがあります。

「あの件、いい感じにまとめておいて」「先方に失礼のない感じで返しておいて」「前回の流れ踏まえて、いつもの感じで」

人には通じる。なぜなら、共有している背景があるからです。その会社との関係、前回の会話、上司の好み、社内の温度感。こういうものを、人は勝手に補っています。

でもAIは、ここを補ってくれません。こちらが渡していない情報は、存在しないのと同じです。

だから、雑に頼むと、AIは雑に一般化した答えを返します。それっぽいけど、自分の仕事にはそのまま使えない。「なんか違う」の正体は、だいたいここです。

多くの人は「指示」は書くけど「背景」を渡していない

AIに頼むとき、人はわりと「指示」は書きます。要約して、メールを書いて、比較表にして、論点を整理して。ここまでは書く。

でも、その手前にある情報が抜けやすい。何のために、誰向けに、どんな状況で、何を避けたくて、何が制約か。このあたりが渡っていない。

すると、AIは指示どおりに動いているのに、結果はふわっとします。

たとえば「クレーム返信を書いて」だけだと、形式的で無難な謝罪文が出てきます。でも「長年の取引先、納期が2日遅れた、相手はかなり不満を持っている、関係を悪化させず再発防止の姿勢を伝えたい、400字以内」まで入ると、かなり違うものが返ってきます。

これはプロンプトテクニックの話ではありません。仕事の背景をちゃんと渡しているかどうかの話です。

出力の質は「性能×渡す情報」で決まる

見方を少し変える必要があります。AIの答えは「賢いかどうか」だけで決まるわけではない。かなりの部分が「何を渡したか」で決まります。

渡すべき情報は、大きく5つに整理できます。

項目説明具体例
目的何を達成したいか「上司に承認される提案書を作る」
前提背景・状況・対象「コスト重視の部長向け」
指示何をさせるか「施策案を3つ比較表で提示」
条件予算・期限・制約「予算100万円以内」
形式出力の長さ・体裁「笇条書きで、200字以内」
  • 前提:背景・状況・対象。「コスト重視の部長向け」など
  • 指示:何をさせるか。「施策案を3つ比較表で提示」など
  • 条件:予算・期限・制約。「予算100万円以内」など
  • 形式:出力の長さ・体裁。「箇条書きで、200字以内」など

多くの人は③の「指示」は書きます。でも①②④が抜けやすい。ここが抜けると、AIは一般論で埋めるしかなくなります。

逆に、この5つが揃うと、同じモデルでも出力の精度は目に見えて変わります。

背景を渡さないのは、忙しいからです

AIへの入力が雑になるのは、能力の問題ではありません。単純に忙しいからです。

今すぐ返したい。とりあえず下書きが欲しい。会議まで時間がない。頭の中にはあるけど、全部書いている余裕がない。だから「提案書作って」「要約して」と短く頼む。

気持ちは分かります。むしろ自然です。

でも、忙しいときほど雑に頼みがちで、雑に頼むほど一般論が返ってくる。このループが起きます。

だから、個人の頑張りで解くより、背景を渡しやすい仕組みがあった方がいい。 たとえば、業務ごとに「誰向けか」「目的は何か」「制約は何か」があらかじめ並んでいるテンプレートがあるだけで、前提の抜け漏れはかなり減ります。

AIにうまく頼めるかどうかは「仕事の解像度」で決まる

生成AIをうまく使う人は、言葉選びがうまい人だと思われがちです。いわゆる「プロンプト職人」のイメージです。

でも実際は少し違います。本当に強いのは、その仕事で何が前提になるかを分かっている人です。

営業なら、相手が何を気にするか、前回どこで止まったかを分かっている人が強い。管理部門なら、どのルールに照らすか、何が差し戻しポイントになりやすいかを分かっている人が強い。

つまり、AIをうまく使う力は「仕事の解像度」に近い。 だから、プロンプト講座をやるだけでは足りない。その業務で何を渡すと精度が上がるのか、そこまで落として初めて現場で機能します。

まとめ

この記事のポイントを3つにまとめます。

  • 生成AIの「なんか違う」は、性能の問題ではなく「渡している情報が足りない」ことが原因であることが多い
  • 指示だけでなく「目的・前提・条件・形式」を渡すと、同じモデルでも出力は大きく変わる
  • 忙しい現場では個人の工夫に頼るより、背景を渡しやすい仕組み(テンプレート等)を用意する方が確実に効く

ここまでは「個人が現場で生成AIを使うための基本」を整理してきました。次回からは視点を変えます。「AIが「あの人の道具」で終わる会社と、「チームの当たり前」になる会社」。個人の工夫だけでは超えられない壁と、組織としての設計に踏み込みます。