「ロジカルに整理→クリティカルに疑う→ロジカルに結論へ落とす」の3ステップを整理します。
この記事でわかること
- ロジカルとクリティカルを統合する3ステップの全体像
- 新規事業参入判断のケースでの実演
- 結論を「条件付き」にする理由とやり方
第6回で、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いを整理しました。今回は、この2つを統合して実務で使うための「3ステップ」を紹介します。
この3ステップは、このマガジン全体を貫く型です。第3部の意思決定の技術も、第4部の組織での活用も、すべてこの型の上に成り立っています。
3ステップの全体像
ステップ1:ロジカルに整理する。
まず、論点を構造化します。「何を決めるのか」を明確にし、選択肢を並べ、判断基準を決める。感覚で議論しない状態を作ることが目的です。
ステップ2:クリティカルに疑う。
次に、ステップ1で置いている前提を検証します。「その根拠は?」「他の解釈は?」「例外は?」。第5回で紹介した前提の書き出しテンプレートが、ここで活きます。
ステップ3:ロジカルに結論へ落とす。
最後に、疑った結果を踏まえて、結論をまとめます。重要なのは、結論を「Yes/No」だけで終わらせず、条件付きの意思決定にすることです。「やる。ただし、この条件を満たす場合に限る」。

ケースで実演:新規事業に参入するかどうか
3ステップを、「BtoB向けの新サービスに参入するか」という判断で使ってみます。
ステップ1:ロジカルに整理する
まず、論点を構造化します。
「何を決めるのか」:この新サービスに参入するかどうか。
「選択肢」:A. 参入する、B. 参入しない、C. 小さく試してから決める。
「判断基準」:市場性、顧客課題の強さ、自社の優位性、収益性、実行体制。
ここまでで、感覚ではなく構造で議論できる状態になります。AIに「この領域の市場規模と競合を整理して」と依頼するのも、このステップです。整理の作業はAIが得意です。
ステップ2:クリティカルに疑う
次に、ステップ1で置いている前提を検証します。第5回のテンプレートを使います。
「この判断が正しい前提」:
前提①:ターゲット顧客にこの課題がある → その根拠は? 10社にヒアリングして7社が同じ痛みを挙げた → 根拠あり。
前提②:顧客は費用を払ってでも解決したい → 例外は? ヒアリングでは好意的だったが、実際にPoC費用を払った企業はまだない → 要検証。
前提③:自社に競合優位がある → 他の解釈は? 技術的には優位だが、営業力で負ける可能性がある → 一番怪しい前提。
ここで、「実は怪しいのは市場性ではなく、営業再現性だ」と気づけます。AIに市場分析を依頼して「有望です」と返ってきても、この前提検証は人間がやる必要があります。
ステップ3:ロジカルに結論へ落とす
疑った結果を踏まえて、条件付きの結論にまとめます。
「結論」:参入する。ただし、フル投資ではなく検証フェーズから始める。
「Go条件」:3か月以内にPoC費用を払う企業が3社以上。
「撤退条件」:3か月でPoC企業が1社以下なら撤退。
「見直し条件」:3か月後に前提を再検証する。
なぜ「条件付き」にするのか
ステップ3で重要なのは、結論を「やる/やらない」の2択にしないことです。
不確実な状況で「完全な正解」はありません。だから、「この条件なら進む。この条件なら止まる」という形にする。これが、第3部で詳しく扱う「条件付き意思決定」の考え方です。
ポイントは、正解を当てにいくのではなく、外れたときのダメージを制御すること。Go条件と撤退条件を先に決めておけば、サンクコストに引っ張られずに撤退判断ができます。
この3ステップが、シリーズ全体の背骨になる
第1部の7回を通じて、クリティカルシンキングの基本を整理してきました。確認する習慣。事実と意見の分離。問いの立て方。前提の書き出し。ロジカルとクリティカルの違い。そしてこの3ステップ。
第2部では「情報を見極める力」、第3部では「意思決定の技術」に入りますが、すべてこの3ステップの延長線上にあります。
まずロジカルに整理する。次にクリティカルに疑う。最後にロジカルに結論へ落とす。この型を持っておくだけで、どんな判断場面でも使えます。
まとめ
この記事のポイントを3つにまとめます。
- ステップ1:ロジカルに整理する(論点・選択肢・判断基準を構造化)
- ステップ2:クリティカルに疑う(前提を書き出して検証する)
- ステップ3:ロジカルに結論へ落とす(Go条件・撤退条件付きの意思決定)
次回から第2部「情報を見極める力」に入ります。
第1部では考える力の基本を7回で整理しました。第8回では「数字に騙されないための3つの視点」を扱います。同じデータでも見せ方で印象が変わる。判断の材料になる情報の質を見極める力を、第2部で身につけていきます。